嵐寛寿郎

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

嵐 寛壽郎

嵐 寛壽郎(あらし かんじゅうろう、新字体:寛寿郎、1903年12月8日 - 1980年10月21日)は、日本映画俳優。本名、高橋 照一(たかはし しょういち)。

300本以上の映画に出演した、戦前映画界の大衆のヒーロー。剣劇王阪東妻三郎には三歩下がって道を空けたが時代劇の大剣客スターである。

日本映画の巨匠の一人・山中貞雄に活躍の場所を与えた点でも記憶される。通称「アラカン」「天狗のおじさん」。

従妹に女優・森光子。甥に山本竜二 AV男優

目次

[編集] 略歴

京都市生まれ。文楽人形遣い・初代桐竹紋十郎の孫。

当初は叔父・六代目嵐徳三郎の縁を頼って18歳で歌舞伎界に入る。初名嵐徳太郎。屋号は葉村屋。後に嵐和歌太夫を名乗る。1925年、独立した市川右太衛門の後釜として片岡千恵蔵とともにマキノ・プロダクションに迎えられる。このとき、牧野省三から嵐長三郎の名を与えられた。マキノ御室製作の『鞍馬天狗異聞・角兵衛獅子』でデビュー。『鞍馬天狗』と『むっつり右門』は生涯の当たり役となった。1927年マキノからの独立に際して長三郎の名を返上、葉村屋の最高位の名跡である璃寛からとった嵐寛壽郎を名乗り、以来生涯この名で通す。独立プロ時代の代表作は山中貞雄を抜擢して撮った『抱寝の長脇差』『小笠原壱岐守』等である。独立プロ、東亜、独立プロ、新興キネマ日活大映、フリー、新東宝、フリーと流転の人生を送った。

『御存知鞍馬天狗 宗十郎頭巾』(1936 新興キネマ

最も脂が乗っていた日活時代には『鞍馬天狗』『むっつり右門』のほかに『髑髏銭』『出世太閤記』『海援隊』等の佳作がある。大映時代は『海峡の風雲児』『河童大将』等が代表作であろう。

悲壮美あふれる阪東妻三郎、躍動感の大河内伝次郎の殺陣に比べ、嵐寛寿郎の殺陣は華麗そのものであった。幼い時より仕込まれた歌舞伎舞踊の要素が物を言った。伊藤大輔監督は『鞍馬天狗横浜に現る』(1943)で、寛寿郎に百メートル疾走する立ち回りを要求し、出来あがった映画で裾さばきが乱れていないことに感心し「あれもほんとうのわざおぎです。」と評している。

戦後、GHQによる「チヤンバラ禁止」で剣戟スターとして牙を抜かれて『白髪鬼』『私刑』等の現代劇に出演していたが、解禁されるや『鞍馬天狗・角兵衛獅子』『薩摩飛脚』等々多くの時代劇映画に主演、衰えぬ華麗な剣戟をみせた。

新東宝では数少ないスター俳優で、『明治天皇と日露大戦争』を製作決定した新東宝社長・大蔵貢に「日本映画界初の天皇俳優にならんか」と言われ、戸惑いつつも御真影や説話のイメージ通りの威厳ある明治天皇を演じて話題となり、作品は空前の大ヒットを記録する。同社の『皇室と戦争とわが民族』では神武天皇も演じている。『怨霊佐倉大騒動』『剣聖暁の三十六番斬り』に、東条英機を演じた『太平洋戦争と国際裁判』がスターとしての晩年の代表作である。

新東宝が倒産すると以降はどこにも専属せず、脇役に回った。『網走番外地』シリーズをはじめ東映のヤクザ映画に出演、松竹では『男はつらいよ・寅次郎と殿様』、日活では『神々の深き欲望』等々多くの映画に出演。また、1960年代後半からはテレビドラマにも時折ゲストなどで出演、その中には子供向け特撮テレビ番組もある。いずれも脇役ながら俳優として存在感は健在であった。

1956年までに40本(一説には42本)もの『鞍馬天狗』に主演する。戦後、原作者の大佛次郎が自ら製作に乗り出しアラカンに封印させたが、大佛の手掛けた小堀明男を主演に据えた『鞍馬天狗』は結局日本映画史に残るとまで言われる(それどころか、作家としての大佛自身の評価にまで傷がつく程の)大失敗作に終わり、代理で2本出る羽目になった。この奇骨の人物を愛した竹中労による『聞書 アラカン一代』がある。晩年のインタビューによると原作者の「天狗が人を斬りすぎる」という意見に対して、アラカンは「活動大写真」(アラカンの表現)としての立場から同意していない。

落語家林家木久扇の憧れの人であり、『笑点』でも時々アラカンの物まねをする。また、笑点の伸介の何でもコーナーにゲスト出演した際に木久扇(当時木久蔵)と共演した。

水木しげるの漫画作品になぜかよく登場する。鬼太郎とともに妖怪を退治したこともある。

[編集] 主な出演

[編集] 映画

[編集] テレビドラマ

第106話「黒い傷あと」(1968年) - 茂十
第248話「なさけ深川」(1971年) - 源太
第5話「流転のめぐり合い」(1973年) - 慈海和尚
第13話「黒髪地獄」(1974年) - 慈海和尚

[編集] 関連項目

[編集] 参考文献

  • 荷村寛夫 『嵐寛寿郎と100人のスター 男優篇』 ワイズ出版、1996年。
  • 荷村寛夫 『嵐寛寿郎と100人のスター 女優篇』 ワイズ出版、1997年。
  • 竹中労 『鞍馬天狗のおじさんは-聞書アラカン一代』 白川書院、1976年。
  • 竹中労 『聞書アラカン一代-鞍馬天狗のおじさんは』 徳間書店〈徳間文庫〉、1985年。
  • 竹中労 『鞍馬天狗のおじさんは-聞書アラカン一代』 筑摩書房〈ちくま文庫〉、1992年。
  • 渡辺才二・嵐寛寿郎研究会編著 『剣戟王嵐寛壽郎』 三一書房、1997年。

[編集] 外部リンク